目立たない総務の私ですが、ハイスペック副社長がジレ甘です
もし真由が高条の言葉を鵜呑みにして誤ったデータを上げれば、総務部のミスとして処理できる。

或いは、もし真由が混乱して鷹司へ直接泣きつけば、「なぜ秘書室を通さず直接副社長へ?」という不自然さを突くことができる。

​しかし、真由が選んだのはそのどちらでもなかった。

「会社の規律」を盾に高条の口頭指示をかわし、完璧なエビデンスを残した上で、正しいデータを提出する。感情に流されない、完璧な防衛戦術だった。

​鷹司はインターホンを押した。

​「高条」

​『はい、副社長』

​「先ほど総務部の市川から上がってきた取締役会の資料だが、確認した。手際の良い処理だ。……ところで、彼女に口頭でデータの修正指示を出したのは君か?」

​一瞬の静寂。受話器の向こうで、高条の息を呑む気配が微かに漂う。

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