元カレ弁護士の恋事情
8・十二年分の(最終話)
それから数日後。
カネモトフーズは盗作疑惑を撤回し、正式に謝罪を発表した。
SNSで騒がれていた件も、少しずつ落ち着きを取り戻している。
今回の一件で、私は自分のデザインと改めて向き合うことになった。
自分が描いてきたものを、誰かに勝手に持ち出される悔しさ。
それと同時に、自分の積み重ねてきたものを信じることの大切さも知った。
そして会社にも、ようやくいつも通りの日常が戻ってきた。
「あれ〜? もう隠さないんですか?」
デスクの後ろから、川田さんがニヤニヤしながら話しかけてきた。
私のデスクのペン立てには、普段使う筆記用具と、カメのボールペン。
「うん、もう解決したし、いいかなって」
「ふ〜ん……。まあ、いいですけどぉ〜。でも、寂しくなりますね。久我先生が来なくなって」
「べ、別に……」
川田さんの顔は、ずっと緩みっぱなしだ。
彼女の言うとおり、事件は解決したから、久我さんはもうここには来ない。
事後処理として、スマホに連絡が来るくらいだ。本当にびっくりするくらい、電話の向こうの久我さんは事務的で、一緒にいた時の彼は夢だったのかと思うくらいだった。
『この件が終わったら……。その時は、覚悟して』