恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
9
昼食を終えてからフロアに戻ると、和香のデスクの上には急ぎの案件資料が山積みになっていた。
海外バイオ企業三社に及ぶ試算データと、今後の事業損益予測シミュレーションの作成を行っていた。
(……急いで終わらせないと、夕方の全体会議に間に合わないなぁ)
パソコンに向かい、複数のエクセルファイルとパイソンを同時に立ち上げて関数を組み直す。
しかし、昨夜からの緊張と胸の動揺の余韻、さらには膨大な数値の羅列に、いつもならスムーズに進む作業の思考がわずかに鈍っていた。
画面を見つめる和香の眉間に、無意識のうちにしわが寄る。
その時、右隣のデスクから静かに椅子を引き寄せる音が聞こえた。
「和香さん、その海外バイオ企業の顧客セグメントデータ、集計条件が少し古いバージョンのままになってます。こちらの最新フォーマットに差し替えておきましたから、ベースに使ってください」
隣に座る帆高が、画面を見つめたまま滑らかな手つきで自身の端末から修正ファイルを共有フォルダへ送り込んできた。
「え……あ、本当だ。ありがとう、帆高くん。助かった……」
和香が焦りながらファイルを差し替えると、帆高は周囲に聞こえない程度の静かな声で言葉を続けた。
「シミュレーションの後半、マクロの計算式が重くなってます。後半の収益予測の部分、俺の方で引き受けて並行処理しておきます。和香さんは前半のグラフ化に集中してください」
「でも、それじゃ帆高くんの分のコンペ資料作成が遅れちゃうんじゃ……」
「大丈夫ですよ。自分の分は、昼前にすべて終わらせてありますから」
涼しい顔で事も無げに言ってみせる帆高の手元を見ると、彼のPC画面にはすでに完成された完璧な分析レポートが並んでいた。
和香が何時間も頭を悩ませていた複雑なデータ処理を、彼は通常業務の合間にあっさりと片付けている。
手際の良さと圧倒的なビジネス能力の高さに、和香は改めて息を呑む。
彼は本当に優秀なのだと一緒に仕事をすると余計に実感する。
帆高はキーボードを叩く手を緩めることなく、和香だけにわかるように目元を少しだけ緩めて囁いた。
「何かあればいつでもいってください」
「……うん、ありがとう」
帆高の的確で手厚いサポートのおかげで、詰まりかけていた作業は劇的なスピードで解消されていく。
その間、ののかも自分の仕事をしている様子だったが、佐々木と二人でやらざるを得なくなり、不満そうな顔をしていた。
だが、彼女も当然優秀なわけで、恋愛を持ち込まなければいい後輩なのになぁ、と残念そうに和香は息を吐いた。
海外バイオ企業三社に及ぶ試算データと、今後の事業損益予測シミュレーションの作成を行っていた。
(……急いで終わらせないと、夕方の全体会議に間に合わないなぁ)
パソコンに向かい、複数のエクセルファイルとパイソンを同時に立ち上げて関数を組み直す。
しかし、昨夜からの緊張と胸の動揺の余韻、さらには膨大な数値の羅列に、いつもならスムーズに進む作業の思考がわずかに鈍っていた。
画面を見つめる和香の眉間に、無意識のうちにしわが寄る。
その時、右隣のデスクから静かに椅子を引き寄せる音が聞こえた。
「和香さん、その海外バイオ企業の顧客セグメントデータ、集計条件が少し古いバージョンのままになってます。こちらの最新フォーマットに差し替えておきましたから、ベースに使ってください」
隣に座る帆高が、画面を見つめたまま滑らかな手つきで自身の端末から修正ファイルを共有フォルダへ送り込んできた。
「え……あ、本当だ。ありがとう、帆高くん。助かった……」
和香が焦りながらファイルを差し替えると、帆高は周囲に聞こえない程度の静かな声で言葉を続けた。
「シミュレーションの後半、マクロの計算式が重くなってます。後半の収益予測の部分、俺の方で引き受けて並行処理しておきます。和香さんは前半のグラフ化に集中してください」
「でも、それじゃ帆高くんの分のコンペ資料作成が遅れちゃうんじゃ……」
「大丈夫ですよ。自分の分は、昼前にすべて終わらせてありますから」
涼しい顔で事も無げに言ってみせる帆高の手元を見ると、彼のPC画面にはすでに完成された完璧な分析レポートが並んでいた。
和香が何時間も頭を悩ませていた複雑なデータ処理を、彼は通常業務の合間にあっさりと片付けている。
手際の良さと圧倒的なビジネス能力の高さに、和香は改めて息を呑む。
彼は本当に優秀なのだと一緒に仕事をすると余計に実感する。
帆高はキーボードを叩く手を緩めることなく、和香だけにわかるように目元を少しだけ緩めて囁いた。
「何かあればいつでもいってください」
「……うん、ありがとう」
帆高の的確で手厚いサポートのおかげで、詰まりかけていた作業は劇的なスピードで解消されていく。
その間、ののかも自分の仕事をしている様子だったが、佐々木と二人でやらざるを得なくなり、不満そうな顔をしていた。
だが、彼女も当然優秀なわけで、恋愛を持ち込まなければいい後輩なのになぁ、と残念そうに和香は息を吐いた。