恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
午後の怒涛のような業務もようやく一段落し、オフィスビル内の時計が十九時を回った頃に和香はパソコンの画面から目を離し、そっと小さく息を吐き出した。
チラリと斜め前方のデスクに視線をやると、帆高はまだ集中した様子でキーボードを叩いている。
端正な横顔には一切の隙もない。
ポケットの中には、朝渡された帆高の部屋の合鍵が入っている。
ずっしりとしたその金属の重みを思い出し、和香は胸の奥を熱くさせた。
(……合鍵をもらっているからって、勝手に彼の部屋で待っているのも、なんだか押しつけがましいかな)
昨夜、あれほど激しく求め合い、朝にはうなじに熱い唇を落とされた記憶が蘇り、途端に顔が火照ってくる。付き合い始めたばかりで、あまり図々しく彼の生活範囲に踏み込みすぎるのも遠慮してしまう。
甘えたい気持ちと、重い女だと思われたくない躊躇いの間で揺れた結果、今日は大人しく自室へ帰るのが一番だろうという結論に至った。
和香は静かに荷物をまとめると、仕事に没頭する他の社員たちの邪魔にならないようにそっと挨拶をしてフロアを後にした。
エレベーターを下り、冷房の効いたエントランスホールへ出る。
ガラス越しの外界はすでにすっかり日が落ち、群青色の夜空が広がっていた。
街頭の明かりやビルの窓から漏れる光が、アスファルトの上に長く尾を引いている。
スマートフォンを取り出し、画面を操作して短くメッセージを打ち込んだ。
『先に帰るね』
それだけ送って画面を伏せると、バッグを肩にかけて、人波の絶えない地下鉄の出入口へ向かって歩き出す。
チラリと斜め前方のデスクに視線をやると、帆高はまだ集中した様子でキーボードを叩いている。
端正な横顔には一切の隙もない。
ポケットの中には、朝渡された帆高の部屋の合鍵が入っている。
ずっしりとしたその金属の重みを思い出し、和香は胸の奥を熱くさせた。
(……合鍵をもらっているからって、勝手に彼の部屋で待っているのも、なんだか押しつけがましいかな)
昨夜、あれほど激しく求め合い、朝にはうなじに熱い唇を落とされた記憶が蘇り、途端に顔が火照ってくる。付き合い始めたばかりで、あまり図々しく彼の生活範囲に踏み込みすぎるのも遠慮してしまう。
甘えたい気持ちと、重い女だと思われたくない躊躇いの間で揺れた結果、今日は大人しく自室へ帰るのが一番だろうという結論に至った。
和香は静かに荷物をまとめると、仕事に没頭する他の社員たちの邪魔にならないようにそっと挨拶をしてフロアを後にした。
エレベーターを下り、冷房の効いたエントランスホールへ出る。
ガラス越しの外界はすでにすっかり日が落ち、群青色の夜空が広がっていた。
街頭の明かりやビルの窓から漏れる光が、アスファルトの上に長く尾を引いている。
スマートフォンを取り出し、画面を操作して短くメッセージを打ち込んだ。
『先に帰るね』
それだけ送って画面を伏せると、バッグを肩にかけて、人波の絶えない地下鉄の出入口へ向かって歩き出す。