恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
8
Side久東帆高

(……これも彼女の仕組んだことだったのか、)

 こめかみに走る頭痛を押し殺し、帆高は出そうになる溜息を必死で堪えていた。
 何故か橋川ののかと二人きりで急ぎの業務をなさざるを得ない状況に追い込まれ、頭の中にあったのは「一秒でも早く終わらせて、和香さんの待つ自分のマンションへ帰りたい」ということだけだった。

 そもそも、突然会議室へ呼び出された時点で嫌な予感はしていたのだ。
二人きりになった途端、あからさまによろめいた振りをして倒れ込んできたののかは涙目で帆高を見上げていた。

『わ……っ!』
『……大丈夫ですか』

 反射的に受け止めた瞬間、ののかは帆高の首元に手を回し、強引に唇を重ねてきた。
 驚いて即座に突き放したが、ののかはそこで初めて、涙目になりながら告白をしてきたのだ。
 以前からやたらと距離が近いことにはづいていたため、完全に想定外というわけではなかったが…―それにしても浅はかすぎる。

『何をするんですか。やめてください』
『私……っ、帆高さんのことが……好きで…』
『……すみませんけど、僕はあなたのことが好きではないので。こういう真似は今後一切慎んでください。用がないなら戻ります』

 冷たく言い放ち、完全に拒絶してあしらったつもりだった。
だが、まさか今日もまた、残業中のすれ違いざまに同じように抱きつかれて香水を擦り付けられるとは思ってもいなかった。
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