恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
(……不注意だった)

 もう少しののかの異常さに警戒心を持っていれば、防げたはずの接触だった。
すがりついてくるののかの腕を冷酷に振り払い、氷のように冷めた視線を下ろした。

『いいですか。非常に迷惑なので、二度とこのような不快な接触はやめてください。次、同じような真似をすれば、即座にコンプライアンス部へ報告します』
『……っ、なんで!? なんで……私じゃダメなんですか!?』

 必死に訴えかけてくる声に、帆高は深く溜息を吐き出すと、一切の感情を排した目で切り捨てた。

『愚問ですね。和香さんが好きだからです。仕事もある程度目処がついたので、俺はこれで帰ります』
『……っ!』

 悔し気にこちらを睨みつけてくるののかを視界から完全に無視し、帆高はオフィスを後にした。
だが―…。

 まさかあの会議室での一瞬を、和香に見られていたなど想像もしていなかった。
そして、あの香水のせいで、彼女がどれほど傷つき、一人で苦しんでいたかなど知る由もなかったのだ。
 ソファーの上で、ポロポロと涙を零しながら帆高を見つめている和香の頬を撫でる。
 あの涙を見た瞬間、まるで生きたまま心臓を鷲掴みにされたかのような、強烈な痛みが胸を突き刺した。
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