バツイチ×未経験の私は、初恋の豪腕弁護士から極甘に溺愛される

第18話:素直に


「性的行為の強要は……不同意わいせつ罪。暴行罪」

 静かな個室の執務室。
 鷹木は頭の中を埋め尽くすそれらの単語をぶつぶつと呟きながら、パソコンの画面を凝視していた。

「随分熱心に調べてるね、例の朝比奈さんの件?」

 背後からかけられた鈴川の声にはっと身を起こし、鷹木はあわてて姿勢を正す。

「あ、所長。すみません気付かなくて」
「いや、いいけど。……え、性的暴行はなかったよね? あの男、マザコン年上好みでしょ?!」

 開かれた画面の文字を覗き込み、鈴川が驚いた声を上げる。

「あ、ないですないです。暴力と暴言だけです! 事件とは関係がなくて。その……個人的に気になったので、もう一度調べておこうかと」
「勉強熱心だなぁ、鷹木くんは」

 鈴川は感心した声を出す。

 鷹木は引きつった愛想笑いを返すのがやっとだ。
 自分が昨夜してしまったことは、法律に照らし合わせればどんな罪になるのか。それを調べずにはいられなかった。

 無理やり詩織に迫り、激しい熱を押し付け、そして明確に拒絶された。
 触れることは許してもらえていると思っていたが、恐怖のあまり抵抗できなかっただけかもしれない。もしかしたら病室での初めのキスも、本当は嫌だったのかもしれない。

 いくら告白があったからと言って、恋人同士になったからと言って、相手の明確な同意なしに行為に及んではいけないのだと、自分は知っていたはずなのに……。

 相手の同意を得ない強引なキスは不同意わいせつ罪、いや、ディープキスは暴行罪にあたる可能性すらある。

 鷹木の目の前が真っ暗になった。

 まずは詩織に誠心誠意説明しなければならない。
 そして、もしも彼女が望むのであれば、自分を厳正に訴えてもらうべきだ。
 一切の言い訳をするつもりはない。どんな社会的制裁も罪も受け入れる。その時は、彼女の弁護は信頼できる鈴川に頼もう。

 昨夜からそんな思考がぐるぐると頭を回り続けて離れなかった。

「あ、弁護士会の田中さんがさ、鷹木くんと食事したいんだって。S病院の勝訴の件で話を聞きたいらしいんだ。予定、空いてる日に入れておいていい?」
「……はい」

 鈴川が遠くで何か言っているのが聞こえたが、今の鷹木の頭には全く入ってこない。
 ただ、膝の上で握りしめた拳が、自身の情けなさで小さく震えていた。



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