バツイチ×未経験の私は、初恋の豪腕弁護士から極甘に溺愛される

第25話:おかしい


 初めて、ビジネスホテルに泊まった。

 麗子の言っていたことについて考え始めてしまったら、もう彼の待つ家には帰れなかった。
 鷹木には『有希の家に泊まる』と連絡を入れてある。

 お見合いのことを、どうして彼は黙っていたのだろうか。そこには、どんな意図があったのだろうか。

 確かに自分の目で見た。
 庭園の暗がりで、二人はまぎれもなく抱き合っていた。顔も、吐息が触れ合いそうなほどに近づけて……。

 嘘だと思いたい。全ては何かの間違いで、幻だったのだと思いたい。
 だが、今まで詩織の隣で微笑み、誰よりも優しく、大切にしてくれた鷹木の方が幻だったとしたら。すべてが嘘だったとしたら。
 思いがけず初恋が実り、彼はもうそれで満足してしまっていたとしたら……。

 いや、そんなことはあり得ない。
 詩織は首を振る。

 ……が、どれだけ否定しても、動揺はおさまらない。
 西園寺麗子という女性が放った言葉が、棘のように突き刺さって抜けなかった。

 自分の存在そのものが、鷹木の輝かしいキャリアを汚しているのではないかという恐ろしい疑念。
 考えれば考える程、不安は大きくなり、詩織の心を黒く塗りつぶす。

 彼は心から詩織を好きでいてくれている――だからこそ、彼は今、身を引き裂かれるような思いで悩んでいるのではないだろうか。

 彼の将来やキャリアのことを考えたら、自分のようなバツを持つ一般人と結婚するより、麗子のように戸籍が汚れていない、高名な判事の娘と結婚した方が良いに決まっている。周囲の誰もが祝福するだろう。
 『全方位負けなし』
  彼の輝かしい経歴。鷹木の努力の証である、その大切な仕事の邪魔を、他ならぬ自分がしているのだとしたら……。

 胸に巣くった不安の種は深く根を張り、着実に、そして急速に大きくなっていく。



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