バツイチ×未経験の私は、初恋の豪腕弁護士から極甘に溺愛される
第30話:誓い
「いっ……」
「ごめんなさい、染みました?」
詩織は消毒液の染みたコットンを持つ手を止め、目の前の顔を覗き込んだ。ソファーに座る鷹木の頬には、痛々しい赤みが広がっている。
思わず声を漏らしてしまった鷹木は、少しきまり悪そうに視線を泳がせ、慌てて取り繕うように言葉を返した。
「大丈夫だ……いや、うん。少しだけ」
いつもなら何ともない風に微笑むはずの彼が、強がるのをやめ、素直に痛みを伝えてくれる。その変化が、詩織の胸をきゅんと高鳴らせた。
事件のあと、現場で軽い事情聴取を受けた。
夜も遅いので詳しい続きは明日に、ということでようやく解散になり帰宅したものの、すでに午前様だ。
「ゆっくり貼りますね」
詩織はガーゼを手に取り、彼の傷口へそっと近づけた。お互いの吐息が触れ合いそうなほどの至近距離だが、なぜだか、安心する。
「よし、できた」
にこりと笑って手を離すと、鷹木がそのまま、詩織を自身の腕の中へと引き寄せる。強く抱きしめた。
大きな体温が全身を包み込み、彼の心音が衣服越しに伝わってくる。
「詩織、ありがとう」
「私の方こそ。庇ってくれてありがとう」
今こそ、心の中に溜め込んできたものをすべて吐き出し、素直になる時だ。
言葉を交わさずとも、互いにそう思い合っているのが分かる。
「慧さん……」
「詩織……」
「「ごめんなさい!」」
同時に発した声が綺麗に重なり、一瞬だけ目を見合わせた二人は、どちらからともなく小さく笑った。
「ごめん。俺から謝らせて。てっきり会合だと思って食事会に行ったら、実はあの女との見合いを仕組まれてた。取り持ったのが著名な先生だったのもあって断りきれなくて、二人で食事だけしてきた。……本当は、食事も断って帰れば良かったんだ」
「じゃあ、知らなかったんですね、お見合いだって」
鷹木は眉を下げてうなずく。
「帰りがけに、西園寺麗子が躓いたんだ。着物を着ていて、慣れない草履だったんだと思う。で、支えた瞬間に実は……少しだけ、唇がぶつかった」
「あ、だからキス!」
詩織の口から飛び出した言葉に、鷹木はポカンとした顔をして動きを止めた。
「何で知ってるの?」