旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜
【過去編】幸福な便り/イシュSide
【イシュSide】
東大陸、陽光と香辛料の香りが満ちるナシール連邦。
ヴァーレン商会の本拠地にある執務室で、イシュは山積みの帳簿から顔を上げた。
窓の外には、彼が支配する活気あふれる港が広がっている。王国を離れて半年。イシュ・ヴァーレンは再び、広大な交易路を操る若き商人としての日常に戻っていた。
「イシュ様、西大陸からの定期便です。……例の方から」
側近が差し出したのは、上質な紙に、繊細な筆致で綴られた一通の手紙。
イシュはそれを手に取ると、迷いなく口角を上げた。
部下たちからの報告で、ソフィアのブランド「サーラ・レーヴ」が王室御用達を凌ぐ勢いで成功していることは既に知っている。だが、彼女の直筆となれば、それは商売の報告以上の価値を持つ。
封を切り、流麗な文字を追う。
そこにはブランドの近況と共に、あの堅物騎士――レイモンドと歩む、騒がしくも満ち足りた日々の気配が溢れていた。
(……ふふ。相変わらずだね、君は)
イシュは背もたれに身を預け、四年前の出来事を思い出していた。
東大陸、陽光と香辛料の香りが満ちるナシール連邦。
ヴァーレン商会の本拠地にある執務室で、イシュは山積みの帳簿から顔を上げた。
窓の外には、彼が支配する活気あふれる港が広がっている。王国を離れて半年。イシュ・ヴァーレンは再び、広大な交易路を操る若き商人としての日常に戻っていた。
「イシュ様、西大陸からの定期便です。……例の方から」
側近が差し出したのは、上質な紙に、繊細な筆致で綴られた一通の手紙。
イシュはそれを手に取ると、迷いなく口角を上げた。
部下たちからの報告で、ソフィアのブランド「サーラ・レーヴ」が王室御用達を凌ぐ勢いで成功していることは既に知っている。だが、彼女の直筆となれば、それは商売の報告以上の価値を持つ。
封を切り、流麗な文字を追う。
そこにはブランドの近況と共に、あの堅物騎士――レイモンドと歩む、騒がしくも満ち足りた日々の気配が溢れていた。
(……ふふ。相変わらずだね、君は)
イシュは背もたれに身を預け、四年前の出来事を思い出していた。