センセイの好きなもの
「ツム～、腹減った！中に入れてくれ」


巧先生はドアをドンドン叩いてくる。しかも声が大きいから近所迷惑だし…。
私が締め出したみたいに思われそうだ。


「吉川先生と飲みに行ったんじゃないんですか？」


「あのあとクライアントから電話がきて長引いたから行ってない。だから何も食ってないし…。ツム～、腹減って死にそう」



……何か買って食べればいいのに。いつもそうだろうに。
どうしてわざわざ家に…。

呆れる他に何も考えられなかった私は、渋々ドアを開けた。


「巧先生、お腹減ったからってどうして家に来るんですか？何か買ったらいいでしょ」


「はい、コレ。ツムの好きなケーキ」


巧先生は私の話も聞かず、代わりにケーキの箱をよこした。駅前の商店街の中にあるケーキ屋さんのものだ…。
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