嫌われ者に恋をしました

 彼女は大丈夫だろうか。それに明日から仕事がやりにくい。俺のせいなんだけど。

 帰り際「ごちそうさまでした」と雪菜は頭を下げた。そうは言っても雪菜は結局一口も食べなかった。

 そして「本当に気を付けて帰ってください」と心配そうな瞳を向けてきた。本気で俺が死なないか心配しているのか?なんなんだろう。

「ああ、気をつけるよ。大丈夫だから。じゃあ……また明日」

「お疲れさまでした」

 頭を下げた雪菜を置いて、そのままくるっと背を向けて歩き始めた。でも、強い引力が働いているみたいに背中の向こうに離れていく雪菜が気になって仕方がなかった。

 すごく振り返りたくて、でも、振り返ることはできなかった。

 俺、いったい何をやってるんだ。しょっぱなからこんな形でつまずいて。

 今までこんなこと、なかったのに。
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