イージーラブじゃ愛せない
「また来よ。今度は柴木ちゃんも一緒に釣りしよーよ」
前を歩く背中に早足で追いつきながら声を掛けると
「そうだね。またみんなで来よう」
“みんなで”って強調された返事が返ってきた。なんか、警戒されてるなあ。
苦笑いを零しポリポリと頭を掻く。胡桃が待っててくれたおかげでキチンと乾かせた髪は、もう冷たくない。
優吾とりんりんが気を利かせてふたりきりにしてくれたチャンス。胡桃がすんなり誘いに乗ってくれたのは意外だったけど、やっぱちょっと警戒されてるみたい。
そんでも俺はこの散歩を“ただのギクシャクした友達”で終わらせるつもりはないけど。
「紅葉すげーなあ。こんだけキレーだと俳句とか詠みたくなるよね」
「俳句とジョージってすさまじく似合わないね」
「うっそ、俺そーとーロマンチストよ?叙情的よ?」
「じゃあ一句詠んでごらん」
「えっとね、柿食えば――」
「うわ、馬鹿だ。もういい」
「ひでぇ」
手厳しいツッコミにゲラゲラ笑うと、胡桃もようやく顔を綻ばせてくれた。