冷たい上司の温め方
第2章

正義は勝つ?


初めての出社は、緊張の連続だった。

よく考えたら『内定』と言われただけで、一度も来たことがない。
十月の頭ににあるはずの"内定式"も、採用がギリギリだったから経験できなかった。

それで就職を決めるなんてと思ったこともあるけれど、ダイオー電機に入れなければ、田舎に帰るという選択肢しかない私は、なにがなんでもしがみつく覚悟ができていた。



比較的新しい自社ビルは、今まで訪問した会社の中で、一番立派な建物だった。

CMや商品のイメージから、さぞかし素敵な会社に違いないと思っていたけど、まったくその通りで安心した。


ここでもうすぐ働けるんだ。

夢見心地のまま、言われていた通り受付で楠さんを呼び出すと、彼はすぐにエレベーターから降りてきた。


やっぱりビシッとサイズの合ったスーツに身を包んだ彼は、背筋も伸びていて一目惚れしそうなほどかっこいい。

< 59 / 457 >

この作品をシェア

pagetop