追いかけても追いかけても
由紀が帰った部屋。
どちらも話そうとしないのでとても静かだ。
奏多がゆっくりドアを閉めて、私の前に座る。
「あゆ、誤解させて不安にさせてごめん。俺、もう八代のこと好きじゃないから…」
その言葉が信じられなくて奏多を黙ったまま見つめる。
奏多も私を見つめていて、信じてと言っているようだ。
「本当なの?」
酷く弱々しい声だった。
それに頷く奏多。
ようやく止まった涙がまた流れ出す。
奏多の指が優しく涙を拭う。
「ずっと俺の気持ち話してこなかったけど、俺はあゆが好きだ。確かに最初は逃げただけだったけど、付き合っていくうちにお前の存在に救われた。
愛しいと思うようになったんだ。」