Sugar&Milk
封をされていない段ボールの中身が転がり私の足元にまで落ちてきた。焦っている落とし主は階段を上がった先にあるカフェの男性店員だった。白いシャツの上に黒いエプロンを着ている。週に何回か寄るカフェだから制服を覚えていた。

カフェ店員は焦って中身を拾い始める。私よりも年下の男の子だ。高校生か大学生のアルバイトだろう。
店員の後ろからは続々と人が下りてくる。ちょうど電車が駅に着いて、改札から人が出てくるタイミングになってしまったのだ。
必死に拾う彼を見ても下りてくる人は迷惑そうな顔をして、中身を蹴ったり踏んだりする人もいる。誰一人この状況を見ても店員を手伝って拾おうとはしない。仕事や学校帰りで疲れているのだろうか。見かねた私は足元に落ちてきた中身を拾い、店員に駆け寄る。

「手伝いますよ」

「す、すいません……!」

店員は私の顔を見ると顔を赤くして、申し訳なさそうに謝る。
段ボールの中身はドレッシングのボトルやペーパータオルが入った袋だった。蹴られたり踏まれても、割れたり破れたりはしていないようだ。

「下まで一緒に運びますから」

中身を段ボールに入れながら慌てる店員に話しかける。

「ありがとうございます……!」

段ボールを抱えながら店員の男の子の後ろについて階段を下りた。

「ここまでで大丈夫ですから」

階段を下りて少し進むと店員が振り向く。近くで見るとやっぱり若い。カフェ店員という肩書が似合う爽やかなイケメンだ。

「手伝っていただいてありがとうございました」

私は持っていた段ボールを店員の段ボールの上に載せた。

「それじゃあ」

< 2 / 148 >

この作品をシェア

pagetop