倦怠期です!
有澤さんは、同期のまとめ役だった。
元々リーダー的資質がある人なのか、気づけばみんな、自然と有澤さんを中心にまとまっていたし、有澤さんの呼びかけで、研修後はみんなでカラオケに行ったり、飲んで騒いで遊んでいた。
私と嶋田ちゃんはまだ未成年だったから、もちろんお酒は飲んでない!
とにかく、有澤さんというまとめ役がいたおかげで、同期みんな仲が良かったのは確かだ。

研修でホテルに泊まり込んでる2週間の間、有澤さんとは席が隣だったから、みたいな理由のとき、少し程度に話したくらいだ。
そのとき、有澤さんが神戸の大学を卒業したこと、遠距離になるから彼女と別れたことを知った。

有澤さんは営業だけど、私と同じ横浜支店の産業部勤務になるからか、私のことを妹みたいに気にかけてくれてる優しい人だとは思った。
でも実は私、その頃有澤さんのことを、サル系のイケメン顔から「ボスザル」と心の中で密かに呼んでいた。
もちろん、本人にも誰にも、その呼び名は言わなかった!

とにかく私にとって、有澤さんは好きでも嫌いでもない、恋愛感情もない人だった。


同じ18歳の女でも、同期の嶋田ちゃんは私よりとても可愛くて、私よりとても女らしさがある。
思ったとおり、高校生のときからつき合ってる彼氏がいたけど、去年の年末に別れたそうだ。
しかも別れた原因が、相手の浮気って・・・!

その彼氏は、嶋田ちゃんと同級生だって言ってたから、まだ18なのに。
私とは無縁の恋愛や修羅場を経験している嶋田ちゃんは、やっぱり私よりずっと大人の女だ。

「で、別れてそのまま?」
「うん。私は未練あるんだけどね、たか、彼がね・・・。やっぱり初めての相手だったからかなぁ。それだけ思い入れあって。私、彼と結婚したいと思ったし、あっちも結婚しようかって言ってたくらいだし」
「だったら未練あって当たり前じゃない?」

とは言ったものの、誰かをそこまで好きになった経験もなく、ましてや身近にいる両親は今、離婚に向けて修羅場の真っ最中だ。
そんな私の言葉に真実味はあるのか・・・自分でも疑問に思う。

嶋田ちゃんもそう思ったのか、それとも、この話をしていたら辛くなるだけだからか。
「すずちゃんは?つき合ってる彼、いる?」と嶋田ちゃんが聞いてきた。

「いないいない。いるわけないじゃん」
「えー?なんでー?すずちゃん、可愛いのに」
「うーん・・・・・・興味ない」
「何に興味ないって?」
「うわっ!」

ボスザル、もとい、有澤さんが突如私たちのところにやって来たと思ったら、私の隣にドカッと座って、話し相手に加わった。

なんかもう、図々しい・・・んだけど、有澤さんだからか、嫌な気はしない。
むしろ、「ま、いっか」と思ってる私がいて。
たぶん嶋田ちゃんもそう思っているのか、有澤さんが加わっても、気にせず話を続けた。


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