残業しないで帰りなさい!

そして、こそっと顔を出した途端、高野係長が何か言おうとしたのを遮って、白石さんと沢口さんが恐ろしい形相でバババッと走り寄って来た。

「封入やるよっ!」

「えっ?えっ?うわっ!?」

そのままフロアに入ることもなく、ズルズルと二人がかりで会議室に連行されてしまった。

バタンと扉を閉め、フフフッと悪い人相で笑うお二人。

「青山さーん、覚悟しなー!」

「逃がしませんよ」

「……」

さっそくですね?さっそくなんですね?

結局、散々質問攻めにされ、顔を赤くして困り果てる私をよそに、お二人はキャアキャア激しく盛り上がり、勝手に舞台女優を演じて、最終的にはみんなぐったり疲れてしまって、最後は黙々と封入作業をした。

いろいろ質問攻めにされてしまったけれど、お二人が応援してくれて、すごく嬉しかった。

男の人をただただ怖いと思っていた。
まさか男の人とお付き合いするなんて、考えてもいなかった。
昨日の私は、課長の前で女の子でいるだけでも精一杯で泣いたりしてたのに。

今となっては抱き締められても平気になってしまった。

抱き締められるとあんなに安心するなんて。
ドキドキするのに心が穏やかになるなんて。

見える世界がガラッと変わって、まるで異次元の世界に足を踏み入れてしまったみたい。

今度一緒に出かけるんだ……。
デートなんて、どうしよう。

不安なことはたくさんあるけど、でも、不安なことがあったらお話しすればいいんだよね?

課長のことを知りたいし、私も知ってほしいから、もっともっとお話しして、少しずつ近付いていけばいいんだよね?

嬉しいことも不安なことも、お互いにわかり合えたらいいんだよね?

私が理解しているお付き合いとはこんな感じなのですが、間違っていますか?……課長。
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