不機嫌な君
「日本の上下関係はおかしいんだ。
上だろうが下だろうが、言いたいことを言わなければ、業績は伸びない」

…この人は、アメリカでどんな仕事をしていたんだろう?きっと、今言うように、言いたいことを言い合って、どんどん業績を伸ばしていたんだろう。

確かに見た目は怖いし、言葉遣いは悪いけど、ただ真面目で、一生懸命なだけなのかもしれない。

「お前も、言いたいことは、これからも言えばいい。それ位で、クビにするつもりはない」
「…金崎部長」
ちょっと、感動。

「…だか、もう少し真っ当な仕事をしろ。文章が雑すぎだ」

「…すみません」
…結局最後はやっぱり、説教されるのね。…グスン。

…タクシーが目的地、私のアパートの前で止まった。

私は慌てて財布を出す。

「ふざけるな」
「…へ?」

「女に金を払わす趣味はない」
「わっ‼︎」

…無理やり、タクシーの外に放り出された。
無情にも、タクシーは行ってしまった。

「…プッ」
思わず私は吹き出した。
金崎部長は、単に、感情表現が乏しいだけみたいだと言うことが、この時わかってしまった。
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