課長の独占欲が強すぎです。
 
 
それは、和泉さんとお付き合いをするようになって数ヶ月が経ったある日曜日。

「和泉さん、軽く何か食べていきません?」

一緒に映画を観たあとお買い物しながら街をぶらついていた私たちは、一件のファストフード店の前で足を止めた。

若者と親子連れでにぎわうそのお店を見やって、和泉さんはわずかに目を眇める。

「もっと落ち着いた場所の方がいいんじゃないか?」

確かに大人のデートとしては好ましいお店とは言い難い。けど、なんとなくそんな気分の日もあるのだ。

「たまにはいいじゃないですか。なんか久々にポテト食べたくなっちゃった」

私が軽く腕を引くと、和泉さんはそれ以上何も言わず一緒にお店の中に入った。


店内は日曜だというのに制服姿の高校生がいっぱいテーブルについている。社会人となった今では、その光景がなんだか眩しい。

「懐かしいなあ。私も学生の頃、よくファストフードとかドーナッツショップで友達とおしゃべりしたっけ」

レジの列に並びながらそう零すと、和泉さんも店内を眺めて頷いた。

「俺も高校生の頃には放課後よく寄ったな。あの頃は部活でいつも腹を空かせてたから、安いファストフードはありがたかった」

部活に明け暮れてお腹を空かせていただなんて、とても男子らしいエピソードに気持ちが和む。けれど。

「ポテトやハンバーガーがセールのときは部活の仲間五人ぐらいで行って二十人前ぐらい食ったもんだ。懐かしいな」

「二十人前!?」

想像以上にワイルドな思い出話に、私は驚愕の声をあげてしまった。高校生男子の胃袋って宇宙だ。ちょっと怖い。
 
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