今日、雨が降ったら【短編】
今日も朝目が覚めると雨だった。
葛城さんの本社勤務が終了してから初めての雨の日。
私はいつものようにバス停でバスを待ち、バスに乗り込む。
一つ、二つ、バス停に止まり人が乗り降りする。
そして5つ目のバス停。
いつも捜していたあの人は…
もう姿を見せなかった。
分かっていたことなのだけど、その事実を再確認させられたような気がして、視界が滲む。
「おはよう」
私はその聞き覚えのある声に体を震わせた。
振り向くとそこにいたのは
大畑さん。
「えっ、おはようございます。今日はどうしたんですか?」
「ん?」
「だっていつもバスじゃないですよね?」
「あぁ」
すると、彼はこう言った。
「今日は雨だから……」
今日、雨が降ったら
貴方に会える。
Fin