極上な恋をセンパイと。

「あの、まだ仕事するんですか?」

「ああ」


思わずつぶやいた言葉に、センパイは資料に視線を落としたまま素っ気なく答えた。

また……寝てないのかな。

疲れた様子の横顔から、そんな事を思った。


そうだ!

あたしはしまった財布を再び握りしめると、そそくさとオフィスを後にした。



あたしがセンパイに出来る事は何もないけど……。










「センパイ!何かお手伝い出来る事、ありますか?」


そう言いながら、ハイ!と冷たい缶コーヒーを差し出した。

センパイはあたしの声に顔を上げると、差し出されたものを見て眉間にシワを寄せた。


「手伝いなんていらねぇよ」



――即答。

絶対拒否されると思った。
でも、今日はあたしも引くつもりはない。



「いいえ!お手伝いしたいんです」

「……なんだよ、なんかミスでもしたか?」



さらにそのシワを深くして、奇妙なモノでも見るような瞳でセンパイが見上げた。

怪訝そうに言うセンパイの手は、缶コーヒーを受け取ろうとはしない。

それも、わかってた。



「してませんよ、ちゃんとセンパイのアドバイス守ってますもん。
そうじゃなくて……、少しでも手があった方が、仕事も早く終わりますし。
そしたらセンパイ、ちゃんと家に帰ってしっかり睡眠とる事できますよ」


強引にセンパイの手を取ると、缶コーヒーを握らせた。
さらにおにぎりも差し出す。


「…………」


一瞬ポカンとして、手元に視線を落としたセンパイは、ギロリとあたしを睨んだ。



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