砂漠の王と拾われ花嫁
「お前、いつまで泣いている!殿下の前で失礼だ!」


いつまでも涙の止まらない莉世にアーメッドは苛立ちを押さえられずに叱咤(しった)する。


その声に莉世の体がビクッと動いた。


この娘はおびえきっている。


ラシッドの心に可哀想な気持ちが芽生えた。



「アーメッド!出て行け」


アーメッドがいればこの娘はずっと泣き続けるだろう。


ラシッドは信頼のおいているアーメッドに言った。



ラシッドに言われて頭を深く下げるとしぶしぶ出て行った。



涙の決壊が壊れたように泣いている少女の顔が真っ赤だった。



目もうつろで熱が再び上がってきたように見えた。




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