粉雪
『―――千里~!
お別れだよ~!!
卒業って嫌だよね~!!』



そうなの?


あたしは、最後まで学校に馴染むことが出来なかったのに。



「…だね。」


友人の話に、適当に相槌を打った。


高校の卒業資格が欲しいためだけに通っていたから、

あたしにとっては卒業が嬉しくて堪らないのに。


これでやっと、勉強からも集団生活からも解放される。


この場所に立っていても、何となく居心地が悪く感じてしまう。


ここは、あたしの居るべき場所なんかじゃない。




『佐々木なんか、彼女が後輩だからって、卒業式の間中泣いてたし!(笑)』


そう言うと、友人は思い出したように笑った。



「マジ~?
ソレ、かなり引く!(笑)」


『だよね~!
ついでに振られれば良いのに!(笑)』



でも、こんなくだらない会話も、今日で最後なんだ。


そんな風に思うと、“学校”って場所も、

少しは意味があったように思えてくるから不思議だ。


あたしが唯一、何も考えずに過ごしていた場所。




『…千里、卒業しても、ずっと友達だよ?』


「ははっ、当たり前じゃん?」



こんな時に嘘をつくことに、胸が痛んだ。


だけどあたしは、何もかも捨てなきゃいけない。


誰に言われた訳でもないけど、勝手にそんな風に思っていた。




「…あたし、もぉ行くね?」


耐え切れず、友人に笑顔で背を向けた。



『ちょっと!千里?―――』


呼び止める声に、あたしが振り返ることはない。



“隼人の女”に甘っちょろい友情なんて必要ない。


そんなもの、足枷になるだけだから。


そんな風に、思っていたのにね。



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