戦国遊戯
「玲子!」

名前を呼んだが、反応がない。近づこうにも、あまりにも2人の力が拮抗していて、下手に手出しができない状態で、近づくことができない。

「玲子!」

力いっぱい叫んだときだった。

大きな叫び声とともに、なだれのように、別働隊の騎馬部隊が本陣に戻ってきた。

「信玄様!」

「うわあぁぁ!」

辺りが混沌とする。その状況を見て、謙信は苦虫を噛み潰したような顔をした。

「信玄!この勝負、一旦預けるわ!」

そう言うと、馬を走らせた。

謙信が撤退するのをみた柿崎も、玲子の放つ一太刀を避けると、そのまま、走って場を後にした。

「まて!」

玲子の怒声が響き、はっとする。

「玲子!」

急いで玲子のそばに駆け寄り、羽交い絞めにして、追うのを止めた。

「まて、柿崎!まてぇ!」

喉がつぶれるんじゃないかというくらい、大きな声で叫ぶ玲子。振りほどこうとする力は、驚くほど強く、幸村が必死で食い止めて、何とかとまるというくらいだった。


玲子の服が、真っ赤な血で染まっているのに気づいた。持っている脇差の柄の部分も、手のひらも。真っ赤に染まっているのに気づいた。



人を殺すことを、あんなに躊躇っていた玲子が…
一体、何があったんだ…

「あああぁぁぁぁぁぁ!」

叫び、その場に崩れた玲子を、そっと。優しく抱きしめた。
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