蝶々結び
上杉先生の人気は瞬(マタタ)く間に急上昇して、生徒達は先生に近付こうと必死だった。


先生のすごい所は、男女問わずに人気がある事。


上杉先生を目当てに近付く女子と、先生を慕って近付く男子。


先生の周りには、いつもたくさんの生徒達がいた。


だから、あたしは4月の下旬になった今も、まだ上杉先生と話す機会が無かった。


授業中に名前を呼ばれたりする以外で、先生と会話をした事は一度も無い。


その気になれば、会話なんていつでも出来ると思う。


だけど…


あたしは上杉先生に群がる生徒達を掻き分けてまで、話し掛けに行こうとは思えなかった。


大人振っているつもりなのか、勇気が無いだけなのかはわからない。


そしてそんな自分に安堵する反面、自分のそんな所にほんの少しだけ嫌気が差していた。


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