囚われジョーカー【完】




「…ご用件は。」

「んー、別に?」

「……ご飯は…」

「食べた。」



その言葉を聞いて、少しホッとした。今私の部屋の冷蔵庫には食材といえるものが殆どない。


多分、私が食に欲がないのが問題なんだろう。



そう言えば、今日だって夕飯を食べていない。




「…三浦さん。」

「ん?」

「……社長息子さんが、こんな一般人の女子大生の部屋に来てて。問題ないんですか?」

「……菫、どうした?」



三浦さんの顔は本当に私の言葉の真意が分からないという顔で。そのまんまです、と呟いた私に一瞬眉を寄せたのを見逃さなかった。




――――多分、さっきあんな夢を見たからだと思う。清水くんの言葉が脳裏を過ぎるからだと思う。


今までなら聞きたくても恐くて聞けなかったことが。今は何か糸が弛んだように口からこぼれる。





< 136 / 393 >

この作品をシェア

pagetop