優しい手①~戦国:石田三成~【完】
抱きしめられたまま目を白黒させる桃にお構いなしの政宗は、惚れ込んだ太股に指を這わせた。


「きゃっ!」


「しかし大胆な格好だな。脚を露わにするなどこの国の女子には居らぬぞ」


身をよじっていると、今まで控えていた小十郎が静かに口を開いた。


「殿」


「よいではないかよいではないか、もっと近う寄れ」


「…政宗様」


「俺は百戦錬磨だ。手練手管を披露しようぞ」


「馬鹿宗様、お戯れはそこまでに」


…確かに“馬鹿宗(ばかむね)”と聞こえた桃と政宗が振り返る。


「小十郎…今俺のことを馬鹿と言ったか?」


「はて、聞き間違いでございましょう」


しれっとしらを切った小十郎を睨み、政宗は興が冷めて桃を離した。


「まあいい。桃姫、案内してもらうぞ」


「え…でも…」


「謙信が逗留できて俺はできぬと申すのか?独眼竜は誇り高き登り竜ぞ、喜んで迎え入れるがいい」


――俺様炸裂な政宗に桃は返す言葉が見つからず案内することになった。


騎乗したクロに馬を寄せてまた脚を見つめる政宗に急に恥ずかしくなった桃は手で太股を庇う。


「み、見ないでください」


「見てほしいから出しているのだろう?案ずるな、今宵思う存分に愛してやろう」


…まるで言葉が通じないので桃が閉口していると、小十郎が毒舌を発した。


「殿は今だ上杉謙信に劣っておりまする」


「まあ確かに色気は俺が下だが男として、そして武将としては俺が上だ。謙信め、早々に越後を奥州に譲って隠居でもすればいいものを」


口を挟めるようなレベルの会話ではなく、ただ居心地の悪さを感じていると…前から単騎で近付いてくる男が在った。


「姫…面白いものを連れてるね。幼なき竜、伊達政宗公とお見受けするが?」


やんわり微笑したままの謙信に政宗は雄々しい豪快な笑い声を上げた。


「如何にも。よく俺が来たことを知っていたな」


「うちの軒猿は優秀だからね。君のとこのは兼続がやっちゃったみたいだけど」


「おかげで面白い女子と出会えたぞ。…先見の明があるとか。誠か?」


突然話題が自分に向いて桃は身体を揺らした。
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