愛を待つ桜
婚姻準正により聡の嫡子となった悠は、全ての手続きを1度に済ませ、夏海とともに一条姓を名乗る事になった。


「ふたりとも、今月末にはマンションに越してくることになった。悠もタワー内にある保育施設に預ける。夏海にはこれまで通り、私の秘書と司法書士を兼任してもらうつもりだ」


そんなことを言いながら『キッズスクウェア』の申込書にせっせと記入している。
どうやら、父の欄に名前を書くのがよほど嬉しいらしい。

如月にしても、こんな聡を見るのは初めてだ。


「なあ聡、ところで、親父さんたちには言ったのか?」


如月は苦笑しつつ何気ない質問をした。
だが、聡の手はピタッと止まる。


「それが問題なんだ」


聡は2度目の離婚騒動以来、親元には匡の結婚式と正月にしか戻っていない。
しかも、更に大きな問題もある。


「夏海の実家にも挨拶に行かなきゃならんのだが。さあ、何と言って話をまとめればいいのか……」


妊娠発覚直後ならともかく、子供は2歳半で聡の実子だ。
その間に他の女性と結婚した事実を、上手くまとめる言い訳が簡単に思いつかない。


「どう贔屓目に見ても、愛人として囲っていたけど、離婚のほとぼりが冷めたので入籍しました、ってとこだな」


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