愛を教えて ―背徳の秘書―
別の意味で、女ふたりの間に火花が散っていることは明らかだ。

卓巳から朝美の爆弾発言で責められたばかりである。この分では、香織との関係まで卓巳にバレかねない。

過去はともかく、昨夜のことは非常に不味い。


『別れるから最後に一度だけ』


そんなことが言い訳にできるとは、宗も本気で思ってはいなかった。


そこに、予想外の形で助け舟が出される。

それは、社長夫人の万里子の言葉――。


「だったら、宗さんにお願いできないかしら?」

「え?」


全員が疑問符を口にする。 


「卓巳さんにお時間があるのなら、わたしはここにいてもよろしいですか? 宗さんの車が出せるなら、雪音さんを連れて買いに行って来てくださらない? そのままお邸まで、ケーキと雪音さんをお願いね。卓巳さん……ダメかしら?」


万里子のお願いに「ノー」と言える卓巳ではなく。

社長夫人に逆らえる秘書はいないのであった。  


< 34 / 169 >

この作品をシェア

pagetop