月夜の翡翠と貴方


涙のせいか、視界でルトの顔が淡く揺れた。

けれど、わかる。

彼が色濃い深緑で、強く私を見ていること。


「本当に汚い奴の目は、もっと濁ってる。お前だって知ってるだろ」


...そうね。

山ほど、知ってる。

けれど私の目だって濁っている。

決して、綺麗なんかじゃないはずだ。

それなのに。


……何故だか少しだけ、ルトの目が悲しそうで。

碧色の髪を抄く手は優しくて。

弱い私は、また泣いてしまいそうだった。

ルトが耳元で、なにか囁く。


「…今日は、もう寝よ?」


悔しくて、私は唇を噛んだ。

...どうして、敵わないんだろう。


ルトは軽々しく私を抱き上げ、ベッドへ下ろすと、優しく笑った。

その顔を、脳裏に焼き付ける。

少しだけ涙が出たせいで、自然と瞼が落ちてきた。



「おやすみ」


ルトの言葉と共に、目を閉じた。







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