Under The Darkness





 京介君と私の存在に気付いた極道さん達が、座っていた椅子からガバッと立ち上がる。

 そして、


「ああ、ぼっちゃん! 用意が出来ました!」


 と、スキンヘッドが眩しい壮年男性の一人が、立ち上がり様にガラガラなダミ声でいきなり叫んだ。興味津々、あたりを見回していた私は、その声に思わずビクーッと飛び上がってしまう。

 隣で京介君のクスリと笑う気配がして、ムッとする。

 一般人な私はこんな極道さんがたくさん居る場所なんて初めてで、驚いて当然だろうと長身の弟を睨み上げるんだけど。

 京介君はそんな私の様子がさもおかしいというように、ふっと目を細めて笑った。

 そうしてる間にも、極道さん達はわらわらと京介君のまわりに集まり出す。

 私は飛び退くように一歩後退し、少し後ろから戦々恐々と彼らの動向を見守った。

 極道さんに囲まれる異母弟の隣から一歩身を退いた私に、すかさず振り向く京介君。彼の目が、『なんで後ろに下がる?』と問うように不機嫌に歪んでいる。

 私は取り繕うように、へらりと口元を緩めた。

 ぼっちゃんぼっちゃん言われて、京介君機嫌悪そうにしてる。でも、顔には優等生な笑顔が張り付いていて。

 誰も彼の不機嫌さ、感情の機微には気付いてないみたいだった。

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