ラストバージン
菜摘の家庭は昔から両親の仲が悪かったらしく、彼女と出会った高校生の時にその事を聞いて以来、よく家庭内の悩み事を相談されていた。


本人は出会った頃にはとても冷静で、両親それぞれとはそれなりに上手く接していたみたいだけれど……。菜摘が大学生の時に離婚してからは、父親も母親もあまり彼女に興味を示さなくなったらしい。


現在独身の母親とは時々は会っているみたいだけれど、それはお互いの近況報告を済ませるとさっさと別れるような食事のみ。
父親は再婚相手と上手くいっているらしく、菜摘はそれに気遣かってあまり連絡していない。


再婚相手にも前の夫との子どもがいて、菜摘の父親も再婚相手もお互いの子どもに会う事は快諾しているみたいだけれど、父親には彼女と会う意思があまりないようだった。
だから、年に一度の近況報告を並べたメール以外は、電話すらもしないと言う。


私はごく普通の家庭で育ったから、菜摘の気持ちを理解出来るなんて事は言えないけれど……。彼女が口癖のように『結婚願望が湧かない』と言うのは、理屈としてはわかる。


実際、菜摘はそれを固持するかのようにドライな恋愛しかして来なかったし、時には割り切った関係を持つ事があったのも知っている。

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