桜まち 
たまにはゆっくり






  ―――― たまにはゆっくり ――――





師走の忙しさにやられながらも。
そういえば、あの日以来望月さんには逢っていないな。
なんて、ふと思っていた。

私に話をしたことで、何か心の整理ができたようなことをいっていたけれど、その整理とやらの結果はどうなったんだろう?
お役に立てた事はいいけれど、未だに何のことか私にはさっぱりだった。

それに、翌日に控えていた大学時代の彼女と交わした約束の日。
望月さんは、思い出の桜の下へと行ったんだろうか。
私がいくら気にしたところで、どうにかなることでもないのはわかっている。
だけど、大好きだった彼女に逢えていたらいいな、と思った。

望月さんは私の一目惚れした相手だけれど、ずっと想い続けていた人がいるなら、その彼女とうまくいく方がいいと思う。
私みたいないい加減で、トンチキチーな女とキスなんかしている場合じゃないと思うんだ。

こうして気にしてはみても、まるでストーカー呼ばわりされていた頃のように、望月さんを見かけることがなくなっていることに、ちょっぴり寂しさを覚える。

引越しはしていないみたいだから、留守がちなんだろう。
考えてみれば、大手に勤めているし、きっとこの師走で仕事に終われ忙しくしているのかもしれない。



そのままお正月もやってきて、私はその冬をお祖母ちゃんと共に過ごしていた。

「あ~、みかん美味しい」

おコタの中でぬくぬくしながら、なんとも緩い内容のお正月番組にクスクスと小さな笑いを零しつつみかんを頬張る。
時々、御節なんかも摘んで、朝昼構わずビールを飲む。

こんなにだらけられるお正月って、素晴らしいっ!!


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