おかしな二人


「英嗣は、みんなとの食事、楽しかった?」

あまりの恐怖に、あたしは話題を自分から逸らそうと無駄な抵抗をしてみた。

「いつもと変らん」

そうですか……。
本当に無駄な抵抗だった、ああ、気まずい。

テレビからは、賑やかなクリスマスソングや笑い声が、低ボリュームだけど聞こえてくるというのに、ここは焼け野原みたいに寒々としている。
なんなら、お経さえ聞こえてきそうだ。
おかげで、クリスマスイヴなんてものが存在しないみたいだ。

まぁ、イヴが存在しなくても、キリストが生まれた、ほんちゃんがあれば、日本の世の中、それほど困る人もいないだろうけど。
要は、みんな騒ぐ理由が欲しいだけなのだから。

「兄貴とは、どんな話したんや?」

水上さんはソファから立ち上がると、スタスタとキッチンへ行き冷蔵庫から缶ビールを出してくる。
それを徐に煽り、炭酸にギュッと顔を顰めた。


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