ちいさな手
家出
ボストンバッグを抱えて家を出ようとする私を父は慌てて止めた。

『そんなつもりで言ったわけじゃない』

そんな弁解をしたが、私は、その言葉に耳を貸さず原付きバイクに乗り実家を後にした。

思えば長い月日…刑務所に入ってた感じがした。

いやそれよりも酷い仕打ちのような気がする。
まったくの自由は許されず…何をするにも毎日監視されていた。

だから一人になっても不安の文字は全くなかった。

虐待からの解放。

未来の希望が私の前にはキラキラと輝いていた。。
すがすがしい空。

外の空気は美味しかった。

東京の空気でさえ、今の私には美味しく感じた。


しかし長い年月の間、私の感情は気がつくと親にグチャグチャに潰されなくなっていた。


お願い、幼い時の時間を返して…


お願い、この辛い感情を元に戻して………


叫んでも誰にも聞こえない叫び………


ただ私はひたすらバイクを走らせた




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