貴方に愛を捧げましょう
第一章


倒れる少女の、あまりに壊れやすそうな華奢な身体を受け止め、そっと抱き上げて。

そのまま窓際へと歩き、窓の下に腰を降ろした。

腕の中の身体を膝に乗せ、静かに眠る少女の顔に目を落とす。


自分よりやや短く少し癖のある艶やかな黒髪、その合間から覗く耳の縁には、幾つもの小さな穴が空けられている。

先程までの、強い意志を感じられる表情とは打って変わった少女。

緊張の糸を解き、安らかに眠る少女の柔らかな頬に、そっと指を滑らせた。

警戒心が強い小動物のように、こちらを強く睨み付ける少女の眼差しが、一切ぶれることのない大きな瞳が。

何故か、目に焼き付いて離れない。


「“愛が欲しい”と口にした人間は、貴女が初めてだ……」


癖のある柔らかい髪をゆったりと撫でながら、月明かりが零れる窓の外を見上げた。

か弱い人間の少女を、腕の中に閉じ込めるように抱き締め、瞼を下ろす。

そして密やかに、愛でるように囁いた。


「由羅、様……」


貴女を愛する間、我は束の間の自由を手に入れる。





   ── 第一章 ──


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