明日へのメモリー

お母さんが微笑み、会長に何か囁いている。当の樹さん自身は、「参ったな」と言うように視線を泳がせた。

 ふいに、障子の向こうから声がした。

「会長、お時間でございます。経財連の会長様が……」

「では、わしはこれで失礼する……」

 会長はうなずくと立ち上がった。

「別室にて、ささやかな会席を設けております。お嬢さんとの具体的な話は、これの母親とゆっくりご相談いただく、ということで……」

 わ、わたしの? 何……? 

 話がさっぱり見えずおろおろしていると、樹さんがやっと助け船を出してくれた。

「その前に、美里さんに少し庭を見せたいのですが……、少しの間、彼女をお借りしてもよろしいでしょうか」

 両親がものすごい勢いで首を縦に振った。お母様も優しい顔でうなずかれる。

 わたしは樹さんに引っ張られるようにして、その場から連れ出されてしまった。

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