ダイス
模倣する理由なんて、憧れ以外有り得ない。



「紗江子さん」


その呼び声に紗江子は足を止めた。


明良のものだと分かったからだ。


「今、何処まで追えてるの?」


明良は顔を近付けて訊いてきた。


「貴方は何故殺したの?」


毅然とした態度を装って返す。


目の前にいるのは何人もの男女を殺した人間。


それを知っているのは自分と紘奈だけ。


結局あの後、紘奈には全てを話した。


自分だけが知っているというのが怖かったし、重荷だった。


やはり自分は弱い。


どんなに強いと思いたくても、こうしてそれを崩される。



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