サヨナラなんて言わせない
消せない過去
ずっと幸せに浸っていた俺の心に微妙な変化が現れるようになったのは、涼子が社会人になってからのことだった。

彼女は彼女で念願だったインテリア関連の会社への就職を決め、
やる気と希望に満ちた新生活を始めていた。


社会に出た彼女は俺の目から見てもはっきりわかるほどに輝いていた。
恋人としての贔屓目だけではない。
忙しいながらも充実した毎日を送る中で、彼女の人としての、そして女性としての魅力はさらに増していった。

彼女が学生の頃のように頻繁に会うことはできなくなっていたが、
それでも俺たちは強い絆で結ばれているという自信があった。


そんなある日、俺が打ち合わせで外に出ていた時にたまたま外回りをしている彼女を街中で見かけた。
いつもとは違う仕事モードの彼女は、まるで俺の知らない女性のように見えた。
そして隣には知らない男の姿があった。
おそらく会社の上司であろうその男性は、落ち着いた大人の風貌で、彼女ととてもいい雰囲気を作り出していた。

ただの上司と部下の姿。
どこにでもあるなんでもない一コマに過ぎない。

だが、俺の心の中に言葉にできない不安が沸き上がってくるのを感じていた。
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