おじさまに、ドン!
今現在の状況ですが…。




「くるみちゃ~ん、どういうつもりかな?」


目の前にいるひげ面のおじさまがちょっと目を細めて、いつもよりワンオクターブ低い声でおっしゃってます。いつものバリトンのような声も好きだけど、これもキュンと来る! なんて内心で萌えてる場合じゃない。


あたしは壁に着けている両腕に力を込めて、間近に顔があるおじさま――寛治(かんじ)さんをキッと見つめた。


「か、寛治さんが……あたしを子ども扱いばっかり、するからです!」


こら、震えるな声! 緊張のあまりにさざめいてる心臓の音も、身体のふるえも。全てを悟られないために、あたしは言葉を続けた。


「あたしはずっと好きだって言ってたのに、寛治さんはいっつもおざなりにしか聞いてくれない。でも、あたしは今日、二十歳になった。もう、子どもじゃない!」

「……だからって、おじさん相手にこんな悪いことをするような子に育てた覚えはないぞ」


寛治さんの呆れたような言葉に、ああやっぱりと絶望が胸を焼く。両手がガクガクと震え、力を失って落ちていく。


そんなあたしは、寛治さんから伸びた腕に気づく余裕もなかった。


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