恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
塚原さんに車で小田原まで送ってもらった後、東海道線に乗り、電車に揺られること一時間。
三人は鎌倉の駅前に到着した。
「ちょうど今の時期だと、文学館で薔薇が見頃ね。文学館に行ってみましょう」
美鈴は雪也の腕を引き、駅の西口の方へと歩いていく。
美鈴は昔から活発かつ勝気で、欲しいものは欲しいとはっきり言う性格だ。
雪也狙いであることも誰にも隠そうとはせず、堂々とアプローチする。
学校内にも雪也狙いの女子は山のようにいるが、雪也がこの間の環のように告白されるようなことはめったにない。
恐らく美鈴が睨みを利かせているのだろう。
それに、美鈴の美貌と強気な性格に勝てると思う女子は、恐らくいないに違いない。
美鈴は雪也の腕を引いたまま、西口を出て御成通りの方へと歩いていく。
御成通りを抜けて由比ヶ浜大通りを西に歩くと、やがて北側に鎌倉文学館の敷地が見えてきた。
ちなみにここからさらに西に進んで少し北上すると、有名な鎌倉の大仏がある。
花澄は二人の後に続いて歩きながら、心が沈んでいくのを感じた。
――――なんだか、金魚のフンみたいだ。