恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



花澄は瞬間的に頬を染め、俯いた。

……なぜか、胸がドキドキする。

環なのに……まるで、環ではない人のように見える。

体を固まらせた花澄の前で、環はふむと頷く。


「これだけ甘ければ、もう食卓に出しても大丈夫そうだな」

「そ、そうだね……」


花澄は視線を逸らすように花壇の方を向いた。

……自分は、どうかしてしまったのだろうか。

と、花壇を見ると。

植えたばかりのプリムラの脇に、秋に植えたパンジーがまだ頑張って花を咲かせている。

パンジーはどちらかというと秋から初春にかけて元気がよく、この時期は夏の暑さでヘタってくるのがほとんどだ。


「あれ、パンジーだよね? この時期でもまだ花が咲くの?」

「あそこは午後になると日陰になる。多少は涼しいと思うが、もうそろそろ限界だな。来週あたり、鉢に掘り起こすか」



< 106 / 476 >

この作品をシェア

pagetop