恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
花澄は瞬間的に頬を染め、俯いた。
……なぜか、胸がドキドキする。
環なのに……まるで、環ではない人のように見える。
体を固まらせた花澄の前で、環はふむと頷く。
「これだけ甘ければ、もう食卓に出しても大丈夫そうだな」
「そ、そうだね……」
花澄は視線を逸らすように花壇の方を向いた。
……自分は、どうかしてしまったのだろうか。
と、花壇を見ると。
植えたばかりのプリムラの脇に、秋に植えたパンジーがまだ頑張って花を咲かせている。
パンジーはどちらかというと秋から初春にかけて元気がよく、この時期は夏の暑さでヘタってくるのがほとんどだ。
「あれ、パンジーだよね? この時期でもまだ花が咲くの?」
「あそこは午後になると日陰になる。多少は涼しいと思うが、もうそろそろ限界だな。来週あたり、鉢に掘り起こすか」