恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



その日の夕刻。

廊下を歩いていた花澄のもとに、美鈴が駆け寄って来た。

いつもはきっちりと整えられた長い黒髪を背で揺らし、剣呑な表情で花澄を見る。

その表情に、花澄は内心で息を飲んだ。


「花澄! ……あんた、文化祭の日、雪也さんと一緒に帰ったの?」

「……え?」


突然の言葉に、花澄は目を見開いた。

あの日、美鈴は別の用事があり、夕方過ぎに下校した。

なので知られることはないと思っていたのだが……。


「島本君に聞いたら、夜の九時過ぎに二人でコンビニのところにいたって……」

「……それは……」


花澄は驚き、言葉を飲みこんだ。

まさか二人でいたところを島本君に見られていたとは……。

何も言えない花澄に、美鈴は畳み掛けるように言う。


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