恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



それでもいい、想いを伝えられただけで自分は満足なのだと九割方諦めていた。

けれど一日、また一日と日にちは過ぎ……。

日を経るごとに、環の心に仄かな希望が芽生えてきた。

期待してはならないと何度自身に言い聞かせても、一度思ってしまうと止まらなかった。

……そして、7日が過ぎた翌日。

あの事件が起きた。


――――今思うと。

あの場に駆け付けたのが雪也だったら、花澄は今頃、雪也と付き合っていたかもしれない。


「……いや、違うな……」


環は自嘲するように笑い、シンクをじっと見つめた。

精神的に弱っていた花澄を強引に陥落するなどということは、あの男はしないだろう。

――――自分とは違って。


「……っ……」



< 362 / 476 >

この作品をシェア

pagetop