ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

  彼女と二人で…   遼side


おためしの恋愛を決めてから4日後の金曜日。
いつも通り店に来た梓が閉店時間に帰って行くと、店の片付けを雅哉たちに任せて3階の自宅に上がる。
蝶ネクタイを外し制服の上着を脱ぐと、先日家具屋で一目惚れした北欧ソファーに腰掛けた。ちょっと奮発した高価な買い物だったけれど、北欧という寒い地方ならではの木のぬくもり感と、シンプルだけどお洒落な感じが気に入っていた。
肩や首を回して疲れた体をほぐすと、小さく息を吐く。そして徐に目の前にあるローテーブルに置いてあった携帯を手に取ると電話をかけた。
5~6回呼び出し音がしてから電話をかけた相手、叔父が出た。

「おう遼。こんな時間にどうした?」

「誠さん、ごめん。今ちょっといい? 陽子おばさんは寝てる?」

「ああ、寝てる。それより明日来るんだろ? 話しはその時でもいいんじゃないか?」

「そのことなんだけど……」


誠叔父さん。親父の弟で、俺の過去をよく知っている人だ。俺の良き理解者の一人で、夫婦でかわいがってくれている。
叔父夫婦には子供はいない。
陽子おばさんの身体が弱いというのもあったが、どんなに離れても付き纏う“小野瀬”という呪縛を子供に負わせたくなかったらしい。
まだ高校生だった俺がその話を聞いたときは、そのことが全く理解出来なかった。小野瀬の名前があれば、地位も名誉も手に入れられる。浅はかにも、そんなことを考えてしまっていた。驕りだ……。
でも今は、その気持ちが嫌というほどよく分かる。
結局小野瀬とは全く関係ない場所で生活していても、あっちはこちらの気持ちや今の状況など一切考えもせず、いきなりずかずかと入り込んでくる。
今回の話が、いい見本だ。
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