翼~開け放たれたドア~

落ちる羽根

~空夜 side~

これは、現実なんだろうか。

「おいっ!!こっちに重傷者いるぞ!!」

「あっちも取り押さえろ!!」

そんな大声が飛び交うなかで、俺はただ茫然と、自分の腕のなかでぐったりとして動かない春輝のことを見つめていた。

ドロドロと流れる血が、俺の手を濡らしていくのを、どこか遠くで感じてるみてぇで……。

信じられない。……信じたくない。

頭が現実を拒絶するように、その光景がすごく色褪せて見えんだ…。

「おい!相澤空夜!!一体何が…、……っ!!?」

後ろから雷さんの声が聞こえた。

地面にも滴る(したたる)赤に、雷さんが息をのむのが分かった。

「春輝さん……っ!?」

あぁ……、龍也さんもいるのか。

だけど、どうしても振り返ることができねぇでいる俺がいる。

今は、こいつを離したくなかった…。

抱きしめる腕に力を込める。

「おい!!何があったんだよ!!?なあ!」

「落ち着け、雷!!」
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