without you
「木戸さん。う~ん・・・宮崎の秘書になるのが嫌なんですか?」
「いいえっ。そうではなくて・・・きっと宮崎社長さんの下で働くことも、楽しいと思います」
「だったらすぐに決断を下さなくても」と食い下がる津島さんを遮るように、私は「でも」と言った。

「私はまだ、久遠社長の秘書の仕事をしたいんです。続けられる限り、続けたいんです。とても好条件でやりがいのある仕事を申し出てくれた宮崎社長さんには、感謝しています」と私は言うと、津島さんに名刺を返した。

「申し訳ないのですが、こちらを使うことは、もうないと思うので」
「そうですか・・・残念です」

津島さんは、本当に残念そうな声を出すと、渋々ながら名刺を受け取ってくれた。

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