「そうそう。さっきね、家で映画観てて思い出したんだけど。大学の夏休みの時、四人で集まったの覚えてる?」
「んー? 四人で集まるのってしょっちゅうだったからなぁ」

「ほら。海外ドラマの映画をいっき観しようって、二人のマンションに集まった時よ」
「ああ。はいはい。覚えてるよ。めちゃくちゃ食べてビール飲んだやつだ」

「そうそう。で、塔子と春斗が睡魔に負けて先に寝ちゃったでしょ」
「うんうん。もう、続きどうこうよりも、眠くって眠くって。だけどあの時、私明け方トイレにいきたくて目を開けたんだよね。そしたら香夏子と秋斗君が寄り添って寝てるもんだから、びっくりしたんだよ」

「やっぱ、塔子が先に起きたんだ」
「え? 違うよ。目は開けたけど、秋斗君が先に起きていたみたいで、寝ている香夏子の手の上に手を重ねてさー。なんか、いい雰囲気だったんだよねぇ。おかげでトイレに行くタイミング逃したし」

「それは、ごめん。それにしても、秋斗が手を重ねたんじゃなくって、私が秋斗の手に手を重ねたんだよ」
「ええー。違うよー。秋斗君、凄く愛しそうに眠ってる香夏子のこと見ながら手を握ってたもん。髪の毛にも梳くように触れてたし。だから、私はてっきり秋斗君は、香夏子を好きなんだと思っていたんだけどな」

塔子は懐かしい顔をしながら、過去の出来事をさらりと言葉にした。
けれど、知らなかった事実が今頃になって明かされたことに、私はとても動揺していた。

そんな風に秋斗が私のことを見ていたなんて、少しも知らなかった。
だって、秋斗の周りにはいつだって沢山の女の子たちが居たし。
私の事は、ただの気の逢う仲間としてしか見ていないと思っていたのだから。
なにより、私は卒業式の日に思い切りふられている。

なのに、塔子の話だと、まるで秋斗が私のことを想ってくれていたみたいだよね……。

昔のことだとはいえ、じゃあ、どうして私の気持ちは受け入れてもらえなかったんだろう、と心の中がぐらぐらと音を立てる。

「あ……。ごめん。時効だと思ったんだけど、言わないほうがよかった……かな……」

春斗と付き合いだして幸せ全開の私だから、昔のことだし、話しても大丈夫と塔子は思ったようだけれど、動揺を隠し切れない私を目の前に申し訳なさそうに顔をゆがめている。

「え、あ……。ううん。いいの。昔のことだもん」

そう……、昔のことだよ……。