【続】三十路で初恋、仕切り直します。

まるで熱愛報道されてインタビューを受けている芸能人みたいに、にっこり笑顔で煙に巻く。

さすがこの程度のことでうろたえるようなひとじゃないよな、と安心したのも束の間。法資が意味ありげな沈黙の後で、「……けれど」と口にする。



「見ての通り、自分は相原に骨抜きにされていますから。……彼女への執心ぶりを見ていただければ、そのあたりのことはあえて自分の口から言わなくてもだいたい皆さんに察していただけるかと」




---------爽やかな笑顔で何てこと言いやがるんだこの馬鹿は……ッ!




下ネタ好きなおじさん方のツボを心得たその回答に、案の定おじさんたちは両手を叩いて盛り上がりだした。


「骨抜きかぁ!つまり桃木さんは相原ちゃんの名器に夢中って意味だよな、それ」
「病み付きになっちまうくらい悦くてどっぷりハマちまったってわけか」
「こんな男前にたっぷり可愛がってもらえて幸せだな、相原ちゃんよ!」



----------幸せですよ、ああ幸せですとも。だけど。



「……そういう話、もうやめてくださいよっ」



泰菜が顔を真っ赤にして怒鳴ると、「いつもはこの程度のハナシで音をあげたりしねぇんだけどな」とおじさんたちがわざとらしいくらい残念そうな顔をする。



「そうそう、いつも俺らの前で平気で『太いの欲しいです』とか『ぬるぬる大好きですぅ』とか言うくせに」
「あ、そういや今日はソーセージの盛り合わせももずくも頼んでねぇな。どうよ、相原ちゃん何がいい?それとも乾き物でも『しゃぶる』か?」

「ほら、どれでも頼んでやるぞ」


鈴木が笑いながらメニュー表を差し向けてくる。田子班の作業員たちは、いつもは気のいいおじさんたちだ。けれど今日ばかりは「このどすけべおやじども」と心の中で口汚く罵ってやる。



「結構です。いりません!わたし、ちょっと失礼しますッ」



法資にはシモネタを余裕でかましていることなんて知られたくなかったのに。いたたまれなさのあまり、ポーチを持って化粧室に逃げるように駆け込んだ。




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